ギターアンプ パワーアンプで歪ませるか、プリアンプで歪ませるか【ゲインとヴォリュームの違いについて】

ソフィ

よく自称ベテランギタリストが
「歪みはパワー管で作る」とか
「アンプはパワーアンプで歪ませるんだよ」とか言うけど
あれはどういう意味にゃ?

シンジ

確かに。
よく聞く言葉だけど、いまいち具体性がなくて
よくわからなくないよな。

調べてみるか。

ちまたでよくパワーアンプに負荷をかけるとか、
パワーアンプで歪ませるなんてよく言いますが、
つまりどういうことなのでしょうか?

この記事では、
その「パワーアンプに負荷をかける」
ということについて考察し、
誰でも理解できるように言葉にしていきます。

なぜなら、僕も実際にパワー管の負荷の感覚を
掴むことができたからです。

実用性は別として。

この記事では、ゲインとボリュームの違いから
パワー管の負荷についてご紹介します。

パワーアンプを歪ませるとは?

さてまずは、
巷のギタリストが自慢気に言う

「パワーアンプで歪ませる」

これってどういうことなんでしょうか。

これの始まりを探るために、
ギターアンプの黎明期まで遡りましょう。

黒電話の時代よりもっと前よ

昔のギターアンプはというと
ボリュームトーンの設定のみで、
今で言うマスターボリュームがありませんでした。

それで音量を調整して、演奏していたわけです。

そんな中で、とあるギタリストが
バンドに負けない大きい音を出そうとして、

ギターの出力を上げ、

アンプもボリュームをマックスにして、

強く弾いた結果、

歪んだサウンド(今で言うクランチサウンド)が
生まれたといわれてます。

これがまた最高にシビれるサウンドで、
ギタリストだけでなく聴衆も巻き込み
ギターサウンドに革命が起きたわけです。

そこから過激に歪ませるマーシャルアンプや
ファズのようなエフェクターで歪ませたり
という文化が一気に進んだわけですね。

しかしこのころは
マスターボリュームで音量を
調整するという文化がない。

なので音を歪ませるためには
常にボリューム(ゲイン)はマックス。

めちゃくちゃうるさいです

大音量に大音量を重ねたギターサウンド。

これこそがアンプに最大限に負荷をかけた
パワーアンプで歪みのかかった音
というわけですね。

時代的にこの時期は、ギターサウンドの最盛期

このころって、
ストラトとかレスポールモデルの
本物のヴィンテージが揃ってる時期。

この頃の音楽を聞いて育った
めんどくさいおじさんたちギタリストたちは
こういった音やギターを好む傾向にあるのです。

そのため、

パワーアンプで歪ませるんだよ!

なんてしたり顔で言うんですね。

結果的にこれが、
パワーアンプで歪ませるということに
つながるわけです。

現代では馴染みは薄くなった

そんな魅力的なはずのギターサウンドが
何故よくわからない存在、体感しにくい存在
なってしまったのか。

それは多チャンネルアンプの登場
原因と言えるでしょう。

クランチサウンド誕生から時代は進み、
みんな大好き歪みサウンドと、
クリーントーンの両方を搭載した
多機能なアンプが出現します。

多チャンネルアンプは、
チャンネルごとにプリアンプが導入されており、
ゲインにより音のキャラクターを作り変え、
スイッチひとつで切り替えが可能です。

そして、
チャンネルを切り替えても
音量の差を出さないために、
音量を調整するマスターボリューム
登場したわけです。

そう、
このマスターボリュームの出現により、
良質な歪みを得るのに大音量を出す必要が
なくなってしまった
のだよ!

きっとパワーアンプは無理な仕事から開放され
さぞ安息を得られたでしょう。

これにより、パワーアンプの音量感が
影を潜め始めます。

その後も技術は進歩していき、

  • トランジスタアンプの進化
  • アンプシミュレーターなどデジタル技術の向上

などの影響により真空管アンプは
一般的なギターアンプとしては
なりを潜めていきます。

今では真空管アンプなんてのは、

  • メンテが必要
  • 繊細で使いにくい
  • めちゃめちゃ高い

などなど一部のVIPが使う
嗜好品へと変わってしまったのですな。

そのため、
なおのこと真空管アンプ由来の
サチュレーションされた音に
馴染みがなくなってきてしまったのだ。

とはいえ、
こんな時代に生きてる我々からすると
真空管アンプの音も普通のアンプの音も
どっちも選べるので
もはやこの音の違いは
=「好みの違い」である。

現代的なトーンが好みの人ならば、
そこまで真空管で歪ませるということに
こだわる必要がないのではなかろうか?

ということでパワーアンプの歪み
なんてものが我々にとって
馴染みにくいものになっていったのですよ。

真空管の役割、ゲインとボリュームの違い

なぜパワーアンプで歪んだ音が人気なのに、
そのくせ我々には馴染みがないのか
という考察をした。

お次は
どういう状態がパワーアンプを歪ませる
ということになるのか考察していきます。

音の違いを体感しているのと
していないのでは、言葉の説得力が違うしね。

ここでちょっとアンプの仕組みについて
お話させていただこう。

さっきの章で多少なりとも
アンプの歴史について触れたけど、
一般的には

ゲインを上げればギターが歪み
ボリュームを上げれば音量が上がる

っていう
イメージしてる方が多いと思う。

実際これらは、一体どう作用しているのか。

ここではアンプのプリアンプにパワーアンプ
ゲインにボリュームの要素についてお話しします。

まずはプリアンプから

プリアンプにある真空管はミニチュア管ともいわれ
本来はエレキギターからの出力を
パワーアンプに届く程度にまで増幅
させる役割だった。

ただ現代ではこの増幅させるというよりも、
歪みを調整して音のキャラ付けする
という意味合いが大きいでしょう。

だから真空管アンプ信者は、
音を良くするという名目のもと
プリ管を変えたがるんだね。

で、プリアンプへの入力を
調整しているのがゲインというつまみ。

ゲインを上げるとなぜ歪むのか。

これはカメラで例えるんだけど、
スマホなんかで夜間の撮影などで
カメラの感度を上げて光を沢山入れようとすると
なんか写真の質感が
ガザガザとした感じになるんだよね。

でてくるわよ

これは感度を上げすぎたことにより
ノイズを拾ってしまうせいらしい。

これがアンプで言う
プリアンプの歪みの部分。

要はプリ管に負荷がかかってるわけです。

ちなみにプリアンプのゲインは
フルテンが0の状態で、
下げるほど絞ってるっていう考えらしい。

とはいえですよ、
ゲインをマックスで使うと
歪みとノイズが酷いことになるから
現実的にはマックスでは使わないよな。

ということで適時調整しましょう

で、
ゲイン→真空管ときてその後段には
マスターボリュームがくる。

これはパワーアンプに送る信号を調節しています。

こちらもゲインと同じく
フルテンが0の状態で、
つまみを下げるほど抵抗が大きくなり、
音量を下げているのだ。

この部分が物議を醸す部分で
プリアンプから送る量を制限する
=無駄な抵抗を通る
ということ
と考えることもできる。

それによって

  • 音の抜けが悪くなる
  • パワーアンプの歪がなくなる
  • こんな物があるから音が悪くなる

などなど言いたい放題されている。

ちなみにこっちには音を歪ませたり
キャラクターをつけるという意味合いはなく、
単純に音量調整であったり、
複数チャンネルのアンプであれば
それぞれの音量バランスを取るために
使われる。

次にパワーアンプ

パワーアンプにある真空管はGT管といわれ、
スピーカーを振動させる程度にまで
信号を増幅させる
役割がある。

つまりこれがないと
スピーカーがならないんだよな。

そして最近ではプリアンプよりも
パワーアンプの真空管の
キャラクターが大事だ
っていう風潮がある。

このGT管の代表的なものでは
EL34とか6L6があって、
イギリスっぽさとかアメリカっぽさとか
音が変わるとかいうけど、

わかんねぇっすよ。

てゆーか曖昧模糊

今回の問題は、
ここに送る音量次第で、
パワーアンプが軽く歪んだり
歪まなかったりするというわけです。

まぁ正直
今までゲインとかボリュームとか
いまいちよくわかってなかったけど、
こうして考えてみると
それぞれが音に対して絶妙なアプローチをしてて
解釈次第でどれも正しい気はしてくる。

真空管アンプってどんな状態が一番いいのか

そのうえで、
最高のトーンを目指したいというのが
変態ギタリストの性。

ではエレキギターに対するアンプの
一番いい状態とはどういう状態だろうか。

こういうと語弊があるかもしれないが、
最初にいった「ギタリストが好む音」に
する場合はどうすればいいのか。

それは、

  • まずボリュームはフルテン
  • 次にゲインは好みにあわせて

この状態が一応フラットな状態で、
そこから調整するのがよいでしょう。

実は一般的なオーディオ機器は、
ゲインでのボリューム調整が基本で、
パワーアンプへの信号はマックス。

つまり余計な抵抗は挟んでいない。

マスターボリュームで音量を調整してる
ギターアンプのほうがイレギュラーなのよ。

だって普通は歪ませる必要なんてない
多チャンネルである必要もないからね!

というわけでギターアンプの
マスターボリュームはマックスに
すればいい感じのギタートーンが
出されるだろう。

とはいってもね、問題はある。

100Wのアンプを一体どこで
フルテンで弾けるというのか

東京ドームとかコマツドームとか
樹海の中ぐらいでしかできないだろう。

東京ドームとかコマツドームとか
借りようと思ったら集客考えなけりゃ
金銭的に死ぬだろうし、
かといって樹海には電気が来てないだろうから
なかなかそんな環境は得られないし
探してるうちに死ぬだろう。

どうしたら理想のトーンが出せるのか。

これらを解決する方法が次だ。

アッテネーターで出力を調整

さてどうやって
真空管アンプからの良質な音を出しつつ
社会的にも金銭的にも死なない状況を
作ればよいのだろうか。

それは

パワーアンプから出た音にボリュームをつければ良い

ギターの音をプリアンプで増幅し、

プリの音をパワーアンプで増幅し、

増幅しきった音をボリュームで調整する。

まぁ文字にすれば簡単な話だけどね、
4発キャビを振動させるエネルギーを
調整すること
は一筋縄ではいかない。

普通にやるとたぶん熱だれしたり、
なんなら燃えるんじゃなかろうか。

そう、つまり簡単にはできないんでしょう。

これを可能とするのが「アッテネーター」

アッテネーターとは、
パワーアンプからスピーカーへ向かう大出力を
熱などのエネルギーに変えて放出し、
音量を調整するもの。

つまり、

蚊の鳴くような小さなギターの音をギターアンプで

東京ドームを響き渡るぐらいにまで増幅し、

それを不要なエネルギーとして大気中に捨てつつ

家の中で弾けるくらいにまで音量をさげる。

ある意味無駄の極みと言える機材

ただこれにより、
真空管アンプならではのトーンを
手軽に作り出すことができるのだ。

もちろん
本来の大音量でキャビネットを
震わすわけではないので
低音感など大音量らしい音は
出ないだろうけど、
そのへんはしょうがない。

とはいってもこれは
昔ながらのギタートーンを好む人向けの話。

現代的な音で使うのもいいと思うので、
わざわざアッテネーターを
使う必要ない人も多いでしょう。

ただ、
真空管アンプにあこがれているのであれば
一度はパワー管を痺れさせるようなトーンを
出してもらいたい気がする。

ちなみに

この真空管の出力をマックスにしたような音。

これは最近のハイエンド機材では
「スデに」再現されています

たとえば僕の所有してるGT-1000

この中にあるアンプシミュレーターには
”SAG”というパラメーターがある。

これがパワーアンプを通したときの
”負荷”の具合を再現しています。

ここの数値を上げるとフルテンのときに近くなり、
下げるほどボリュームを絞った感じになる。

歪みチャンネルで上げすぎるとボンボンするので、
上げ気味ぐらいで調整すると、
臨場感が出ていい感じだよ。

これも先程のセッティングと一緒で、
まずSAGを高め(マックス)にしてから
ゲインを上げるといい塩梅になる
と思う。

もちろんSAGはコンピューターで再現しているので
大きくしすぎると胡散臭くなります。

適時、調整しましょう。

その他にもパワーアンプの具合まで再現した
IRもあると思うから試してみるのもいいと思う。

たぶんLINE6のHelixとか
他のプロセッサーにも搭載されているはず。

なので
とりあえす真空管アンプっぽさを感じてみたい!

って人はそれを試してみるのもありです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

パワーアンプで歪ませるとは、
マスターボリュームを開放して
大音量の信号を送ることでなし得る技でした。

それを手軽にかつ実用的にしたのが
アッテネータSAGなどの技術です。

是非一度、アッテネーターによる音の違いや
GT-1000のSAGによる違いを体感してみてください。

きっとギタリストとして新しい道が開けるでしょう。

ではでは!