僕がディーラーで車を販売していた時期、急速に進化していった車の自動ブレーキ。
ほとんどこんなの止まらないじゃんていう駄目なものから、高級車に採用されるこれはすごいってものまで実際に体感してきました。
そこで今回はそれぞれ自動ブレーキの性能についてお話していきます。
というわけで今回のテーマはこちら!
Contents
緊急ブレーキの仕組み

これが出たばかりの頃は、そんなもの必要ないという意見が多くあった緊急ブレーキシステム。
今ではついていて当然で、むしろその性能に応じて保険料の割引が行われるようになるほど一般的になってきました。
もちろんこの世界も日進月歩でどんどん進化していっており、出始めだった2013年後ロのものと比べると雲泥の差です。
ではその仕組を紹介していきましょう。
ちなみに一般的に”自動ブレーキ”と言われるこのシステム。
僕はこの自動ブレーキという言い方には語弊があると思っています。
このネーミングだと、なんだか車が勝手に止まってくれるから人間の思考回路が停止しても大丈夫というような語弊を感じます。
というわけで当ブログでは意図的に緊急ブレーキと読んでいます。
緊急ブレーキのセンサー

緊急ブレーキのセンサーにはおおまかに5種類のセンサーが使われています。
もちろんこれらのどれが優れているというわけでもなく、それぞれ適材適所があります。
赤外線レーザー

まずは赤外線レーザーです。フロントガラスにレザーの送信部と受光部を設置し、前方をセンシングする仕組みです。
赤外線レーザーは非常に感度が高く、天候などにも影響されませんし近距離であれば反応速度は抜群です。そのため前方の踏み間違い防止にも一肌脱ぎます。
ただ短所もあり照射距離がほんとに距離が短いのです。そのため速い速度では間に合いません。
なのでこれをメインとする緊急ブレーキは時速30km以下の低速での活用がメインです。
ミリ波レーダー
お次に出てくるのがこのミリ波レーダー。
バンパーの中に妙に異質なプラスチック板があると思ったらそれがミリ波レーダーです。
実はここまで緊急ブレーキが一般的になる前から高級車などに搭載されていた追従システムは、このレーダーでセンシングしていました。
このセンサーの良いところは天候に影響されにくいのもありますが、とにかく長距離まで飛ぶこと。現在あるセンサーの中では一番のセンシング範囲といえます。
ですから追従システムにはもってこいなんですね。遠目に見ても車を判断できますし、一台先の車まで監視することができるものですから緊急ブレーキにもうってつけです。
ただもちろん弱点はあります。それは車にしか反応しないこと。ミリ波レーダーは車などについている、反射板に対して反応しています。

下に付いてるね。
そのため、歩行者など車以外のものに対してはセンシングがおよびません。
完全な仕組みを求めるなら、ここに歩行者を検知する仕組みが必要なのです。
単眼カメラ
最近よく出てくるのがカメラです。フロントガラスにでかでかと貼ってありますね。
単眼カメラの良いところは人間の目のように周りを見渡せるので、車や歩行者はもちろんのこと、道路の白線などもしっかり認識できますから、情報の汎用性が高いことです。
そんな単眼カメラの弱点は天候に大きく左右されることやパソコンのスペックが必要なことです。
結局人間の眼と同じで、前が見にくいと車も状況が判断できません。そのため夜間の走行や悪天候では本領発揮できない場合が多いです。そして単眼カメラは映像処理を行ってセンシングするため性能限界が早く、搭載するコンピューターもスペックが高いものが求められます。
ただ現在ではモービルアイのような非常に高性能なカメラが搭載されていることが多く、単眼カメラでも十分に追従できるほどにスペックが上がっています。なのでここは一概に弱点とはいえません。
ステレオカメラ

さて、単眼カメラときたらお次はステレオカメラです。こちらもフロントガラスにぴたっと張り付いていますね。
基本的には単眼カメラと同じですが、人間の目のように2つの目でセンシングするので判断が早いです。
そのため数あるセンサーの中で、一番万能なセンサーだと言えるでしょう。
そして弱点は単眼カメラと同じく、天候などに左右されやすいことです。
音波ソナー
そして最後に音波ソナーです。バンパーにちょこっとくっついてる丸いやつです。
緊急ブレーキそのものではありませんが、意外に重要なのでここに出しておきます。
音波ソナー自体は昔からある仕組みで、音波で周囲の状況をセンシングして警報をしてくれるものですね。もう何十年も使われている信頼性の高いシステムです。
その信頼性の高さからそのセンサーを使って運用されているのが踏み間違い防止です。
駐停車の低速時や発進時の急ブレーキとアクセルの踏み間違い。これを抑止するために多くのメーカーで採用されています。
これらのセンサーをうまく組み合わせて現代の緊急ブレーキは成り立っています。
それぞれの仕組み

さてそれぞれセンサーの特徴を見てきましたね。では代表的な仕組みをいくつかご紹介していきます。
赤外線レーダー
これは緊急ブレーキ黎明期にコンパクトカークラスに多く採用されていたセンサーです。
精度は高いが30km/h以下の低速でしか反応しないので、駐車場ぐらいでしか使えませんでした。
なので道路はもちろん、活躍する場面がほぼなく、緊急ブレーキが付いてるのに事故した!
ということも多くあり、緊急ブレーキのイメージを大きく落としてしまいました。
やはり使い所が難しいのか、今では全く見なくなりましたね。
単眼カメラ+ソナー

この組み合わせに代表されるのは日産のプロパイロットです。
カメラでブレーキから追従走行まで、ソナーで前後の踏み間違いを防ぎます。
単眼カメラの映像処理のみでプロパイロットという自動運転をこなしたり緊急ブレーキをこなしたりと、シンプルながらも非常に大変な仕組みです。
そのためかカメラ単体での制御は難しいようで、追従走行時の挙動があまり良くないと不満の声も多く出ていました。
単眼カメラ+赤外線レーダー
この仕組みを採用しているのは主に、トヨタの簡易版TSSやスズキのDSBSです。
こちらもプロパイロットと同じく、車や車線、歩行者の認知から緊急ブレーキまで、ほとんどの動作をカメラで行い、低速の動作で赤外線レーザーを補助的に使うのでカメラ性能に大きく依存しています。
性能の違いがわかりやすいのがトヨタのTSSで、初期型と後期型のTSSとでは性能が全く違います。
ちなみにスズキのDSBSは緊急ブレーキから追従走行まで多くのことをこのセンサーで行います。
単眼カメラ+ミリ波レーダー+ソナー

実はこの組み合わせが、一番多くのメーカーで採用されています。
ホンダのホンダセンシングもトヨタの上位版TSS。最近では日産もこの仕組みへと移行しています。
遠距離や速度域が高いときに反応し、天候にも左右されにくいミリ波レーダー。
車線や歩行者認知、中速域では単眼カメラ。
踏み間違いや低速域ではソナー。
このように役割分担がしっかりしているのである意味一番バランスの良い仕組みと言えるでしょう。
あとはメーカー側の制御や外部の明かりなどで見逃しなどはどんどん潰されていくでしょう。
ステレオカメラ
単体センサーでシンプルなのが、スバルのアイサイトやダイハツのSA3です。
カメラ単体ですべてのセンシングをこなす、ある意味究極のシンプルセンサーです。
カメラ単体のセンサーですから、夜間の視界の悪さなどが弱点とされます。
しかし最近ではアダプティブヘッドライトによりその問題も解消されつつあります。
これはヘッドライトユニット内にいくつかの光源を持っていて、自動的に照射範囲を変えることでいつでもハイビームのような最適な視界を維持する仕組みです。
これにより夜間でも十分なセンシングが可能です。
結局どの仕組みがいいのでしょう?

数ある緊急ブレーキシステムを紹介してきましたが、今後はおそらく
単眼カメラ+ミリ波レーダー or ステレオカメラ
この一騎打ちとなっていくでしょう。
もしかするとこれらの根底を覆す、もっと画期的なセンサーがでるかもしれません。
日進月歩の世界を、今後とも楽しみながら見ていきましょう。
最近の車って自動ブレーキが採用されてるし安心。
でもメーカーによって違いがあるって言うけど、どう違うの?